イノベーション戦略 3)新事業開発プログラムの実施事例

4.イノベーション・新規事業開発」にて示した4つのプログラムについて、実施事例を紹介します。


① 新事業提案
 

② 技術シーズ事業化探索

③ 新事業公募プログラム
④ 技術アイデアの評価

 

① 新事業提案プログラムの事例(1) (情報通信企業、売上高0.8兆円)

この企業は、受託型事業から提案型事業への転換を図るため、新事業の創造と共に、「事業創出型の人材」の育成を求めていました。
そして、有名ビジネススクールへの依頼を含む何年かの試行錯誤の後、私のプログラムが本格的に採用され、以後5年以上プログラムを進化・継続しています。
このプログラムの結果、数百億円規模まで目指せる新事業も誕生し、新たな事業部門も生まれました。
 
このプログラムでは、新規事業の創出とともに、事業創造型の人材育成が求められたため、以下の工夫を随所に盛り込んでいます。
  • 自主チームで検討する価値創造テーマ(新事業のコンセプトと事業計画)と、個人テーマ(リーダーシップと成長)を、同時並行で進める
  • 現行のプログラムをベースに、実施して得た知見を元に全体構成を若干見直し、「ダイバーシティ環境で求められるリーダーシップ」を追加 
  • チームで検討する価値創造のテーマは、「グローバル×成長戦略」を基軸に自主的に選択し、実際に顧客インタビュー等を進め(アクション・ラーニング)、貴社の新規事業として採択されうる事業計画の作成を目指す
  • 個人テーマでは、マネジメント特性診断ツールを活用し、現実の職場の中で、自分がいかに価値創造に貢献し、またリーダーシップを発揮するか、メンターの指導のもと検討し、また参加者相互で刺激しあう

② 新規事業提案プログラムの事例(2) (情報機器販売、売上高0.2兆円)

この企業は、クラウド化などの進展に伴う既存の情報機器の売上高減少に伴い、新たな販売商材や事業開発に迫られていました。

検討の結果、全国に張り巡らせた販売店網を活用した新たな事業が複数構想され、また顧客ヒアリングを通じた事業モデルの検証も進みました。現在では、次世代の経営の柱としてこれら新事業が成長することが、大いに期待されています。

なお、この企業では、全国から選抜した参加者をリーダーとして育成するという経営陣の意思のもと、リーダー育成を図る組織マネジメントのプログラムを並行して走らせました。

 

② 技術シーズ事業化探索の事例 (化学会社、売上高0.4兆円)

この企業では、約3ヶ月の検討を通じ、
 (Step1) 研究所などに埋もれた技術シーズの発掘と、その事業アイデアを洗い出し、
 (Step2) 事業アイデアの中から、実現性と市場の魅力の高い優先度の高い事業アイデアを選定し、
 (Step3) 事業化に向けたフィージビリティ・スタディを進めました。

この企業はその後、フィージビリティ・スタディに合格した事業アイデアについて、事業化の検討を進め、また技術開発を継続しています。

 

③新事業公募プログラムの事例 (情報通信企業、売上高0.8兆円)

この企業では、イノベーションを期待する風通しの良い「企業風土」の醸成と、社内に埋もれた「意欲の高い人材」の発掘を目的に、以下の「新事業公募」のプログラムを設計しました。

私自身も、このプログラムの設計からサポートまで、全工程に関わりました。

 

 1.案件公募

 2.第一次審査

 3.企画書策定サポート

 4.第二次審査 (通過チームには賞金提供)

 5.事業計画策定サポート

 6.第三次審査 (通過チームには社長賞100万円提供)

 7.専任部隊(新事業推進室)による事業化推進

 

初年度の公募では、200件以上のアイデアが集まり、2つのチームが第三次審査を通過し、事業化を推進することとなりました。

 

 

その後、この会社は日経新聞から「優れた企業風土」の会社として表彰されましたが、その選定理由の一つに、活発な新事業公募プログラムが挙げられました。

このプログラムは、5年目の現在も続いており、この会社の企業文化としてすっかり定着しています。

 

 

④ 技術アイデア評価プログラムの事例 (産業技術総合研究所)

つくば市にある日本を代表する研究機関である「産業技術総合研究所」は、研究成果を事業に繋げる「イノベーションスクール」を毎年開催しています。

私はそのスクールの一環として、イノベーションの講義と、研究成果の事業化アイデアの評価を、担当しました。
参加者は、ほぼ全員が博士号を持つ研究者。丸1日のプログラムで、午前が講義、午後が各自のアイデアの評価(チーム代表を設定)という形で進めました。

参加者の満足度は非常に高かく、以下のようなコメントを多数いただきました。(ごく一部を紹介)

  • 本講義の中で、ペルソナという考え方を初めて聞いて、ペルソナを具体化するとアイデアが次から次に出てきて、今までにないおもしろさを感じることができました。自分たちの専門技術も曖昧な私たちでさえ、ペルソナを描くと、事業コンセプトの設計を行うことができました。もちろん、実際に企業で行われている事業コンセプトの設計よりも遥かに現実離れしていましたが、個々人で異なる意見がいつもより多く出ているように感じました。

    そして、演習後に河瀬さんが、これがコネクティングドットですというお話をされたとき、自然と自分たちがコネクティングドットしていたことに驚きを感じました。実際、テーマを絞った後、他の人の研究テーマと組み合わせられないかといった議論がグループ内で起こりました。

  • 私はこれまで新しい・革新的な技術を開発しさえすれば、製品としてのイノベーションもそこから自然に発生するのではないかと考えていました。しかし今回の講義において、技術のみではイノベーションは生み出せない事が良く分かったと思います。マーケティング的な視点について今後、もっと積極的に学んでいく必要が有ると感じました。新規事業化についての演習では私たちの班は体温発電によるスポーツ用メガネを提案しましたが、これは私にとっては実際に「楽しい」と思える製品になったので、その事は非常に良かったと思います。またペルソナの特定やユースケースの想定に関しては、私は当初は、皆教育的背景の近い同年代の研究者なので自分と同じような意見ばかりが出るだろうと考えたのですが、実際に議論を行った結果では、予想外に自分の想定した用途とは異なる意見が多く出され、認識を新たにしました。この事からは、事業コンセプトの設計の際にいかに多くの視点からの意見が必要であるかを、学ぶ事が出来たと考えています。

  • 河瀬氏の、正解を押し付けるのではなく「何が正しいかなんて誰にも分からない」というスタンスは、こちらの気持ちをとても楽にしてくれました。グループワークでも、穴だらけの事業コンセプトに苦言を呈すこともなく、各グループの良いところを拾い上げて終始和やかな雰囲気で終わる事ができました。自分たちの知識が追いついていない部分やロジックの詰めが甘い部分というのは、大勢の前で指摘されて恥をかかなくても、グループで作業をしていく中で自然と見えて来るものです。また、他のグループの発表を聞いていても、悪いところは目につきます。逆に、河瀬氏が挙げていったポジティブな面の方が、意外と自覚なくやっていたり、見過ごしていたりして、そういう視点もあるのだと面白く勉強になりました。

  • 演習では、チーム内の話し合いの結果、事業は外科技術教育用の装置となった。これは「現段階チームの各人が担当しているテーマ(認知心理・センサー・生命科学・化学)」「新規性」「お金になる」という条件からで、ペルソナははじめ「自分の卓越した外科技術を後輩に教えたいが、不可能で困っている天才外科医」であった。しかしいざ実際自分がペルソナであった場合、自分がこの装置にお金を払うかと考えるプロセスを経て、「卓越する外科技術の教育に困っている病院」の問題解決手段としての装置を提供するという発想に至り、お客にとっての価値とは、困っていることを解決することであるということを実感することが出来た。