イノベーション戦略 2)新事業開発の方法論

「リーン・スタートアップ」を日本企業に適用する

イノベーションや新事業を成功させていくための標準的な方法論といえるのが、2010年頃にシリコンバレーで誕生した「リーン・スタートアップ」です。

 

この手法はとても有効ですが、シリコンバレーのスタートアップを対象としたものだけに、必ずしも日本企業ではそのまま使えるものではありませんでした。

 

「リーン・スタートアップ」を日本企業で実践し、新事業を成功させ、また社内起業家(イントレプレナー)を育てるために、いくつかのプロジェクトを通じて確立した方法論を、2015年に「新事業開発スタートブック」として上梓しました。

 

ここから説明する方法論は、この本に記述するものです。

新事業開発の標準となる方法論 「リーン・スタートアップ」

従来の事業開発とは、固定的な市場調査にもとづき、最初に開発投資や販売投資をかける方法論であり、成功確率は非常に低いものでした。
それに対して、「リーン・スタートアップ」とは、仮説検証を繰り返しながら、小さくはじめた新事業を大きくしていく方法論です。このため、成功確率を格段に高めることができますし、仮に失敗しても投資金額は最小レベルにとどまります。

日本企業に適合した、新規事業開発のプログラム

米国のスタートアップの場合、自分たちの追求する事業領域や事業の目的は、最初からクリアです。


しかし、日本企業が新事業開発を考える場合、「まず、どの領域の事業で考えるか」とか「どんな事業をしようか」といった、入口の検討から始めなければならないことが、ほとんどです。

この部分の検討を、リーンスタートアップに加える形で、プログラムを設計しまいした。

 

このプログラムでは、以下の3つのステップを踏んで、新事業を開発していきます。

  • STEP1:事業テーマを選ぶ
  • STEP2:顧客と提供価値を定める
  • STEP3:事業計画をつくる

このステップ全体を仮説検証的に進め、成功しない場合は、またステップを戻って試行(トライ)を繰り返します。

新事業開発プログラムの標準的な構成

新事業開発の標準的なプログラムは、以下の構成となります。

もちろん、実際のプログラムは、会社のニーズや事業特性に合わせて個別に設計します。

 

 

 STEP1: 検討テーマの設定は、各自が持ち寄ったアイデアの中から選択する。

      ただし、会社から方針が与えられた場合は、それに従う。

 STEP2: 顧客と提供価値は重要。顧客ヒアリングは必須とし、ピボットを繰り返していただく。

      この段落で、中間報告を行うことも多い。

 STEP3: 事業計画は、STEP2の検討が終了した時点から着手する。

      また、作成した事業計画については、事業化・継続検討の可否を、役員に判断いただく。

 

 

新事業開発の失敗パターン

新事業開発に失敗する場合、以下の落とし穴にはまることが多いものです。

私のプログラムでは、これら失敗を避けるような工夫を随所にしています。

 

1.技術優位性への依存・過信

技術ドリブンでの製品化してしまうが、誰にどう売るかを、ほとんど考えたり、また確認していない

 

2.数少ない事業アイデアからの出発

いくら当初に、「これで行けるはず」と思っても、必ずしもよい事業仮説ができるわけではない。最初の事業アイデアの数が乏しいと、途中で無理だとわかっても、方向転換できずにその検討を進めるしか選択肢がなくなる

 

3.市場調査の偏重

新規事業は「新しい価値」を提供するものであり、いくら市場調査しても見えてこない。たとえば、ソニーの大ヒット商品「ウォークマン」も、何回市場調査をしても、その結果は否定的だった

 

4.事業計画としての完成度の追求

実感値のないまま、想定するユーザーの声を直接聞かず、事業計画書のロジックを「脳内妄想」的につくりあげ、事業計画書として書面の完成度を高め、丹念に練りこむことにエネルギーを注ぐ

 

5.当初の事業計画への固執

当初の事業計画は、あくまで仮説であり臨機応変に見直すべきだが、当初の事業計画を金科玉条として突き進み、玉砕する

 

6.当初からの大規模組織の組成

検討当初から、経営陣の期待を受け、大規模な専門組織を組成。その結果、無用な官僚的手続きが多くなり、検討スピードを遅くし、またコストも増大。現業部門からは「遊んでいる」との批判を受ける

本来ならば、少人数の機動的な組織で仮説検証をクイックに進め、確度が高くなってはじめてリソースを貼り、本格的な開発投資をすべき