成長戦略 1)ワークアウトの「方法論」

ドラッカーの質問と、経営戦略を作る「3つのステップ」

経営戦略とは、自分たちがどこを目指し、何をすべきかという「ストーリー」です。
このストーリーを作り、語り、それにしたがって動くことこそが、戦略の策定と実践なのです。
ドラッカーは、次の質問に答えるかたちで、戦略ストーリーを描くべき、と説きました。

 質問1: WHY  「われわれのミッションとは何か」 〜ミッション

 質問2: WHO  「われわれの顧客は誰か」     〜ターゲット顧客

 質問3: WHAT  「顧客にとっての価値は何か」   〜提供価値

 質問4: WHERE  「われわれにとっての成果は何か」 〜ビジョン/ゴール

 質問5: HOW     「われわれの計画は何か」     〜経営計画・実行計画 
 
私のプログラムでは、このドラッガーの方法論に基づき、
 STEP1: WHO  経営分析によりターゲット顧客を定める
 STEP2: WHAT  提供する価値の仮説を検討する
 STEP3: HOW  行動計画を作る
という、3つのステップで検討を進めます。
(ちなみに、WHYは開始時に確認し、WHEREはSTEP2の中で答えます)
この3つのステップは、どんな業種、どんな会社、どんな目的で経営戦略を作るときにも共通です。
全社の中期経営計画を作るときも、事業部単位の事業計画を作るときも、また新規事業を検討するときも、この3つのステップに従って検討します。
 

ステップ1:分析フレームワークを駆使し「WHO?」に答える

ステップ1では、SWOT分析を通じ、リソースを集中すべき事業領域や顧客セグメントを検討します。
SWOTとは、まず自社の強みと弱み(Strength/Weakness)を把握し、外部環境にある機会と脅威(Opprtunity/Threat)を特定します。
ここで外部環境に魅力があり、かつ自社の強みを活用できる領域を、伸ばす(攻める)ことを、基本と考えます。そして下図にある「攻める・守る・止める・参入する・放置」の5つの方針に従って、投入する経営資源を優先順位の高いところに、シフトします。
ステップ1の答えとなる「WHO」とは、基本的にはこの「攻める領域」のことです。 

 

しかし、このSWOT分析を、いきなり書き出そうしても、うまくいきません。

そのためこのステップでは、以下のような「経営フレームワーク」を活用し、情報を整理・棚卸し、合理的かつ効率的に分析を進めます。

 

 フレームワーク1: コアコンピタンス分析    自らの強みを知る    by ゲリー・ハメル
 
 フレームワーク2: PEST分析 & Five-Force分析  周りの世界を知る    by マイケル・ポーター
 
 フレームワーク3: バリューチェーン分析    自らの課題を知る   by マイケル・ポーター
 
 フレームワーク4: 競争戦略分析        ポジションを決める  by マイケル・ポーター
 
 フレームワーク5: 成長戦略分析        成長の方向を決める  by イゴール・アンゾフ
 
 フレームワーク6: 顧客セグメント分析     攻める顧客を決める  by フィリップ・コトラー
 
 フレームワーク7: 事業ポートフォリオ分析   事業構造を変革する  by ボストン・コンサルティング・グループ
 

ステップ2:提供価値(WHAT)を定め、ビジョン(WHERE)を描く

攻める顧客ターゲットを決めたら、顧客となる個人や会社をよく調べた上で、顧客にする「提供価値」、つまり「顧客にとっての」自社の提供できる価値を検討します。

 

この価値は顧客にたいする「提案書」という形で作成いただくことが多いです。

戦略検討のアウトプットが提案書?と思うかもしれませんが、顧客にとってうれしい価値が提案できない限り、どんなに精緻に事業計画を立てたところで、どのみち事業は成功しません。まずは、このハードルをクリアすることが重要であり、逆にここをクリアできれば、あとはスムーズに検討が進みます。 

 

 

また提供価値を定めたら、新たに事業でめざすゴールとして
ビジョン」を描きます。

 

このビジョンを部門内で共有しメンバーが合意することで、組織全体がビジョンの実現に向けて動いていきます。

このとき、現在の制約条件を離れて、未来に実現している姿をイメージすることが大事です。

顧客に対して大きな価値を提供できれば、現在とは比較にならない規模の事業を無理なく想定できることも多いものです。

ステップ3:具体的な「ビジネスモデル」と「ロードマップ」を検討する

ステップ3では、ステップ1と2で定めた顧客セグメント、提供価値ビジョンに加え、マーケティング計画や技術開発計画、またアライアンス戦略や組織変革などを含む「戦略ストーリー」を、「ビジネスモデル・キャンパス」の上にマッピングしていきます。

 

また、このビジネスモデルをどのようなステージを経て実現していくか、おおまかなシナリオを、ビジョン実現に至る「ロードマップ」の上に描きます。このロードマップは、財務的な目標よりも、獲得顧客数や必要な商品開発、また組織体制などリソースを検討することに価値があります。

 

仮説としての事業計画の作成とPDCAを通じた進化

ステップ1〜3の検討を通じ、事業計画の骨子ができあがります。

 

事業計画では、項目ごとにドラッカーの質問に答えていく形で、戦略ストーリーを語ります。

 項目1: WHY  事業の目的

 項目2: WHO  ターゲット顧客

 項目3: WHAT  提供価値

 項目4: WHERE  ビジョン/ゴール

 項目5: HOW     ビジネスモデル・実行計画 

 

ただ、ここで作成した事業計画はあくまで仮説です。実際にそれが機能するかは、検証して確かめなければなりません。

仮説を検証するには、顧客に直接ヒアリングしに行ったり、海外の支店で調査をしたり、という作業を含みます。これら仮説検証を繰り返すことにより、当初は見えなかったチャンスや新しい事業展開の可能性が、どんどん開けてきます。